Canon A-1
2008年8月17日更新
出張で行った下関で、たまたま見つけたハードオフに入ったところ、ジャンクコーナーにキヤノンA−1が置いてありました。
ボディ単体ですが、価格はたったの6000円。
見た目はそれほど酷くないし、ジャンクと言うほどではなさそうに見えます。
全く駄目なのかなと思って試しに見せてもらいました。
A−1に限らず、この当時のキヤノンのカメラには良くあるシャッター泣きの症状はあるものの、その他は意外に状態が良かったし、何より安かったので購入する事にしました。
触ってみると巻き上げレバーがゴリゴリ、シャッターがバチャコンのいかにものキヤノンスタンダードです。
お世辞にも感触が良いとは言えません。
オマケにボタンやら、レバーやらが取り留めもなく、ボディの至るところに取り付けてあります。
多機能ながらシンプルで操作ボタンやダイヤルが最小限という僕の愛機ミノルタXDと比べるとまるで対局にある様なカメラです。
図らずも、これで当時の3大メーカーの主力AE一眼レフカメラ(ミノルタXD、キヤノンA−1、ニコンFE)を全て手に入れる事が出来ました。
比べてみると、メーカー毎のコンセプトの違いに興味深いものを感じます。
ミノルタXDの先代機であるミノルタXEが開発された頃、年々機能の充実と共に、AE一眼レフカメラは大型化し、重量級のカメラとなっていました。
そんな折、オリンパスが発売したオリンパスM-1(発売後ライカで有名なエルンスト・ライツ社からクレームがつき、OM-1に改名したのは有名な話しです。)の小型軽量というコンセプトに各メーカーは度肝を抜かれました。
オリンパスOM-1はマニュアル操作の一眼レフカメラに過ぎませんでしたが、そのコピー「小型軽量」こそ多くのアマチュアカメラマンが待ち望んだものでした。
それ以降、各メーカーはこぞって小型軽量の一眼レフカメラの開発に力を注ぎます。
ニコンはそれまでのニコマートシリーズを捨て小型ニコンと銘打ったマニュアル一眼レフカメラ ニコンFMと絞り優先AE一眼レフカメラ
ニコンFEを投入し、キヤノンはシャッター速度優先AE一眼レフカメラ
キヤノンAE−1を発売します。アサヒペンタックスはオリンパス以上の小型軽量化を果たしたカメラを開発するといった具合でした。
ただ、当時はAE一眼レフカメラといっても露出を決定する要素である絞りとシャッター速度のいずれかを優先する事しか出来ませんでした。
シャッター速度優先AEカメラなのはキヤノンだけで、他のメーカーはほぼ絞り優先AEカメラでした。
これは、カメラとレンズの連動性にも関係するのですが、絞り優先AEの場合、カメラ側の開発だけで事足りる事から多くのカメラメーカーが導入したものと思われます。
つまり、絞り優先AEの場合、レンズの絞り値に対してカメラ側のシャッターだけを電子制御すれば済むからです。
対して、シャッター速度優先AEの場合、カメラ側からレンズの絞りを制御する必要があり、交換レンズ全てに装置を内蔵する事は到底不可能でした。
また、シャッター速度に比べると絞りは可変段数が少なく、シャッター速度優先AEの場合、自動露出をうたう割には頻繁にメーターを確認して、露出限界を越えない様にする必要がありました。
最も、絞り優先AEの場合には、気付かない内にスローシャッターになっていて酷い手ブレ写真になっていたなんて事もありましたが。
写真を絵作りと考えた場合には絞りを開いて主題を際立たせたり、逆に絞りを絞って圧迫感を強調したり出来る絞り優先AEが便利です。
高速シャッターで一瞬を切り取ったり、スローシャッターで動きを表現したりするのにはシャッター速度優先AEが便利です。
要は使い勝手の問題であるのですが、当時はカメラの製造技術が追い付かず、ユーザーが購入の際に選択する必要がありました。
今では、大抵の高級カメラにはシャッター速度優先AEも、絞り優先AEも搭載されていてユーザーがカメラの使用時に選択出来ます。
最も今では、フルオートモードにしておけば、大抵は問題なく撮影出来てしまいますが
この露出のフルオートモードとなるプログラムAEを初めて搭載したのもキヤノンA−1でした。
当時は、バカチョンカメラ(今では差別用語になるのかな?)と言われた簡便なコンパクトカメラにのみ搭載された機能でしたが、高級カメラの代名詞だった一眼レフカメラに搭載する事で一躍人気を博しました。
一部のプロカメラマンからはあんなもの要らないと轟々たる非難を浴びますが、ユーザーの大多数を占めるアマチュアカメラマンにとっては関係ない事でした。
カッコいい一眼レフカメラを持ってプロカメラマン気取りでいるには最高のカメラだったと言えるでしょう。
また、ミノルタXDと比べて、キヤノンA−1には当時プロ用カメラにしか付けられなかったモータードライブがアクセサリーにある事も魅力的でした。
スタイルもどこかメカっぽくて、当時人気を博したアニメのガンダムみたいとアマチュアカメラマンには大好評でした。
さて、キヤノンA−1を手に入れた半月程後、徳島に出張がありました。
そこのハードオフのジャンクコーナーで今度はキヤノン純正の100-200mmF5.6望遠ズームレンズを見つけました。
3本あったのですが、中でも一番状態の良さそうなのを見つくろって購入しました。
価格はたった3000円。
6000円のボディにはこれで十分でしょう。
レンズを付けて見ると意外にピント合わせがし易いのに驚きました。
ミノルタのカメラはミノルタXD以降、アキュートマットと呼ばれる明るいピントグラスを採用した事で有名ですが、キヤノンのピントグラスもこれに負けない程の造りです。
先にニコンFEの話をしましたが、ニコンFEに比べると遥かにピント合わせはし易いと評価出来ます。
ただ操作感だけはどう言い訳しても繕い様がない程、酷いものです。
操作ボタンやレバーが十分整理されないままに付いている印象なのです。
更に露出モードの切り替えも面倒です。
プロトタイプとなったキヤノンAE−1からの発展型とした為か、基本はシャッター速度優先AEカメラになります。
そして、シャッターダイヤルでプログラムAEモードに切り替えられます。
ここまでは比較的自然に理解出来ます。
納得いかないのは、絞り優先AEモードへの切り替え方法です。
シャッターボタン下のレバーを切り替えるとプログラムAEモード+シャッター速度優先AEモードから絞り優先AEモードに切り替わるのですが、絞りリングはレンズ側に付いているのが当たり前なので、心底驚きました。
更にカメラ前面の小さなレバーがシャッターダイヤルを不用意に動かさない為のプロテクターだったのには思わず噴き出しました。
ただ、この操作し辛いカメラを使っている人が何となくカッコ良く見えたのも事実です。
何だか、訳の分からない複雑そうな機械を扱っているとカッコ良く見えるものですから。
そう言う意味でもキヤノンA−1は大成功だったと言えるでしょう。
左 プログラムAE+シャッター速度優先AEモード、 右 絞り優先AEモード